社員ブログ

今朝、新大阪駅で見知らぬ一人の福沢諭吉に出会った。
どうやら、財布という着る物も着ずに、本屋さんの前で路頭に迷っている。

四つ折に折りたたまれたそれは、これだけ雑踏があるにもかかわらず
誰に発見されることもなく、通りの真ん中をフラフラしていた。

私が立ち止まって、その一万円札を拾い上げると
まわりの何人かがやっとそれに気がついたようである。

一様に「あ、一万円落ちてたんだ。。。」という
ちょっとした驚きとともに、少し惜しそうに私の手先を見つめているのが面白い。

見渡しても、落とし主らしき人物は見当たらない。
見ていた人は、名残惜しそうに私の手元に視線を残しながら去ってゆく。

周りの視線が多少気になりつつ、戸惑いながら、とりあえず私は拾った一万円札を
コートのポケットにしまって会社の方へ足を向けた。
朝礼がはじまるまで、あと20分ほどである。
遅刻してしまうわけにはいかない。

どうしようかちょっと思案しながら、とりあえず会社のある方向へ進むことに決めたのである。

歩きながら、このまま自分のものにしてしまうことも考えた。

100円玉を拾ったわけではない。
我が家の食費に換算したときの、この一万円が占める範囲について
考えさせられてしまった。
一万円は正直、大きい。

でもそう、ここは新大阪駅である。
だれか、旅行に行く人がもらった小遣いを
ポケットから落としてしまったのであれば、そんな残念なことはない。
私だったら、結構へこむ。

一万円、もらえたらラッキーなのに、どこかに届け出るつもりでいる。

拾ったところを見た人に、「あの人、ラッキーやったなぁ」と思われただろうなと考えながら、
拾得物預り所のようなものがないか探してみる。
しかし、探しているときに限って、探しているものは見つからない。

うろうろしながら、やはりこのまま自分の財布に入れてしまうことも考えた。
もう面倒でもあるし、私は通勤の途中なのだ。

そのまま、駅を離れそうなときだ、昭和の頃からここにありましたという
雰囲気が出ている「鉄道警察」という看板が目に入った。

そういえば、ここにこんなのあったっけなぁと思いながら
近づいていくと、私より先にドアを開けて入っていく男の人。
私と行き先が同じだと分かると、怪訝そうに振り返り「何か御用ですか?」と聞かれた。

普通のサラリーマンとは違う風の、険しさのあるその人に多少緊張しながら
「あの。。。そこで一万円札拾ったんですけど。。。」と言ったら中に通してくれた。

やはり警察の人だったらしい「落し物、拾われたみたい。だれかよろしく。」と言って
その人は奥に行ってしまった。

ドアの中は本当に時代が止まったような雰囲気。
火曜サスペンスとかで取り調べに使われているような事務机。
それと似たような色の、座るときにキュルキュル鳴る椅子。
何年も使い込まれた木の棚や、ずっと変わってなさそうなグレーの床。
広さは入口からでは分からなかったが、思っていたよりも広いなという印象を受けた。
窓枠や時計までが古く、それゆえに調和が取れていて
ちょっとレトロやん。とまで思ってしまった。

きょろきょろしながら、通された椅子に座る。

10人ほどの人が、何かしらの仕事をしたり
ただ座っているような人もいたけれど、みんな一様に濃い青色の制服を着ていた。
机や椅子や棚が結構たくさんあって、密着警察24時に出てくるどこかの交番とは
また違う様相で、見渡してしまった。

興味深かったのは、そこにいる人たちの顔つきである。

みんな似たような、何かを睨んでいるわけではないけれど、少し鋭い目をしていて
口元もどこかしら緊張している気がする。
顔全体から漂う雰囲気というか、一人ひとりから漂う雰囲気がどこかしら共通していて
やはり、警察官という仕事は特殊な仕事の一つで、みんなどこかしら
似てくるものがあるのだろうなという印象を受けた。

対応してくれた40代くらいの男の人も、やさしいがどこか警戒しているような、堅い。

一通りの名前なり連絡先なり、要は素性のようなものを聞かれて
どこでいつ拾ったかなど、おおよそ聞かれるだろうなと思っていたことを答えていく。

答えたことは、私と警察官が向かい合って座っているレトロな机の上にある
未来から来たのではないかと思われる黒いノートパソコンに打ち込まれていく。

その間も、いつもと違うところに来たという興奮で、好奇心旺盛にあたりを伺ってしまう。
しかし、私の視線は対応してくれている警察官や
その後ろで全然別の仕事をしている人にすぐに捕らえられてしまう。

みな人の視線というものに敏感なのだろう。

ちょっと怖いなと思いながらも、普段はめったに来ないところに来たことが楽しくなってしまった。

届け出ず、そのまま自分のものにしてしまってたら、おいしいもが食べられたかもしれない。
でも、届け出てよかったな。
そうでないとこんなところに鉄道警察があって
中の雰囲気はレトロで、しかも意外に広いスペースがあって
窓からは通勤している人が見えるなんて知りもしなかった。

説明を聞いていると、期間が過ぎても一万円の落とし主が見つからなければ
所有権は私に移るらしい。
また出会えるであろうか、この一万円に。

出会いは価値観の拡大である。
今日出会ったこの一万円も、人ではなかったが
また知らない世界を見せてくれた気がする。

正直者は馬鹿を見るとも言われるが、ちゃんとよい行いをしていると
面白い経験になるものだというのも今回の感想である。

手続きが終わり、鉄道警察を出ると、そこはいつもの新大阪駅であった。
別世界から戻った気分である。

遅刻しかけて慌てて会社に向かったが、朝からの寄り道はちょっとした冒険気分を味わえた。

 

2013年3月5日 火曜日 | 7:58 PM - 社員ブログ


 
当社運営サービス

一食即発大阪天満 欲バル街バルイベント

洗宅倉庫来店不要で自宅にいながらクリーニング

ウィズ総合コンシェルジュサービス

大阪本社 〒532-0011 大阪市淀川区西中島7-1-29 新大阪SONEビル8F TEL:06-6303-5503 平日9:30 - 18:30
Copyright © prosysta Inc. 2014 All Rights Reserved.